自動ドアの防護柵に設置義務はないが安全策の規定はある|防護柵の設置規定・選び方を簡単解説
自動ドアは建物利用者の利便性を向上させてくれる設備ですが、「衝突・指の挟み込み」など事故発生の可能性もあるため、自動ドア・防護柵はセットで設置を検討する必要があります。
防護柵の設置に法律上の義務はありませんが、明確な設置規定はあるため、自動ドア設置の際には確認しましょう。
今回は首都圏の事業用建物・店舗などのエクステリア工事の専門家『株式会社MAC(マック)』が、「防護柵の設置規定」「防護柵の選び方」などをわかりやすく解説します。
安全・便利な建物利用を実現するために、ぜひ最後までごらんください。
首都圏で自動ドアの設置を検討中の方は、株式会社MAC(マック)へお問い合わせください。
Contents
自動ドアの防護柵に設置義務はないが安全策の規定はある
経済産業大臣が、2017年に「自動ドアの設計・設置から保全点検までの規格」を制定しました。
【日本産業規格(規格番号:JISA 4722「歩行者用自動ドアセット-安全性」)】
この規格には、自動ドアの開閉による事故を防止する安全策として、防護柵の設置規定も含まれています。
〈参考〉国土交通省ウェブサイト『建築保全業務共通仕様書等改定に係る検討』>第3回(令和4年2月7日)資料>資料2−1-3
現在、この規格を遵守する法律上の義務はありませんが、自動ドアの設置者の安全策不備による事故が発生した場合には、賠償責任を負うことになる可能性があります。
自動ドアに防護柵を設置する際の規定|衝突・指の挟み込みなどの事故を防ぐ具体策
では、自動ドアに防護柵を設置する目的を確認したうえで、防護柵を設置する際の規定を具体的に確認しましょう。
自動ドアの防護柵を設置する目的
防護柵を設置する主な目的は、以下のとおりです。
- 自動ドア利用者を開閉箇所へスムーズに導く
- 自動ドア利用者が、指の挟み込みなどの事故が発生する可能性がある箇所へ侵入することを防ぐ
防護柵は、自動ドア利用者(歩行者・車椅子利用者など)が直感的に「防護柵である」と認識し、危険を避ける行動をできるように設置するのがベストです。
身体状況などに関わらず広く活用できる建物の整備方法(ユニバーサルデザイン化)を、こちらの記事で確認できます。
〈関連ページ〉自動ドアは建物のユニバーサルデザイン化に役立つ|なぜ・誰のために自動ドアの検討が必要なのかを解説
また、自動ドアの製造メーカーも自動ドアの機能面からのアプローチで事故防止対策を実施しているため、のちほど「自動ドアの最新機能|自動ドアメーカーにも安全対策の義務があるため安全に使用可能」で紹介します。
防護柵の設置規定
日本の自動ドアは一般的に引き分けタイプ(2枚の戸が左右両方に開閉するタイプ)で、防護柵はお子さまが登る・くぐるなどができず簡単に破損しない、以下のサイズ・強度以上のものを設置するのが望ましいとされています。
- 高さ:90cm以上(回転する自動ドアは110cm以上)
- (足元に空間があるデザインの防護柵)床から防護柵までの距離:10cm以下
- 強度:490N/mの力で上部から押したときに損傷しない強度
〈参考〉消費者庁『自動ドアによる事故』>意見>参考資料3 事務連絡「自動ドアの具体的な安全対策について(情報提供)」>歩行者用自動ドアセット〈引き戸〉安全ガイドブック2ページ
自動ドアの種類
自動ドアの種類は以下のとおりで、回転する自動ドア以外は、「片引き・引き分けの自動ドアへの防護柵設置規定」をベースとして、安全な設置方法を検討します。
【自動ドアの種類】
- 片引き(形状が円形の自動ドアも含む):1枚の戸が左右どちらかに開閉
- 引き分け(形状が円形の自動ドアも含む):2枚の戸が左右両方に開閉
- 片開き:1枚の戸が前後どちらかに開くタイプで、左or右向きに開閉
- 両開き:2枚の戸が前後どちらかに開くタイプで、左右両方に開閉
- 片引き折り戸:1枚の折れ戸が左右どちらかに開閉
- 引き分け折戸:2枚の折れ戸が左右両方に開閉
- 回転する自動ドア:360℃回転する
例えばこちらは片引きの自動ドア設置事例で、自動ドアが開く際に外壁にドアが引き込まれるため、自動ドア利用者が戸袋に挟まれる事故を防止できます。
〈関連ページ〉片引自動ドア硝子入れ工事|AGC(エージーシー)防火ピラン事例紹介
首都圏で自動ドアの設置を検討中の方は、株式会社MAC(マック)へお問い合わせください。
建物の現状に応じて、安全で便利に活用できる自動ドア・防護柵の設置プランを提案いたします。
自動ドアメーカーが実施している防護柵以外の安全策
日本産業規格には自動ドアメーカーが実施するべき安全策の規定もあり、多くの自動ドアは以下のような設計で製造されています。
- 自動ドアの開閉時に指・頭・体の挟み込みが発生しないよう、ドアと壁の間などに適度な間隔がある
- 身体状況などに関わらず安全に通過できる開閉速度となっている
- 自動ドア利用者が、どの自動ドアでも「開閉や危険を知らせる表示」を直感的に認識できるよう、共通のデザインを使用している
- 自動ドアのシステムに不具合が発生した場合に、安全に作動するモードに切り替わる など
また自動ドアの最新機能は以下のとおりで、ご自宅でも自動ドアを安全に使用できます。
- ドアを閉じている途中に人・物を検知すると、ドアが開く(ドアに人・物が挟まれない)
- 「あける・しめる」ボタンはあるが、非接触で開閉可能
- 人の動きに応じて開閉スピードが自動調整される など
日本産業規格には保全点検の規定もあるため、「自動ドアは複数の安全対策のもとで設置・使用するもの」と考えていただけると幸いです。
自動ドアの防護柵の選び方
防護柵選びの際には「JIS A 4722」対応の製品を選ぶと、ここまで紹介してきたような規定を満たしています。
防護柵のサイズ・デザインはさまざまなので、安全性が高いことはもちろん、建物のデザインにマッチする防護柵を選びましょう。
「防護柵のパネルを広告にする」というアイデアもあります。
また、防護柵の設置は法律上の義務ではないため、「別の方法で安全対策をしたい」という方もいらっしゃると思います。
「JIS A 4722」対応の防護柵を設置しない場合も、規定を参考にしながら安全策を実施していただけると幸いです。
- 指の挟み込みなどが起きそうな場所に植木鉢・傘立て・看板などを置く
- 自動ドア利用者を開閉口へ導くような床のデザインにする など
「自動ドアの近くに商品を陳列しない」「自動ドアの前後に段差を設けない」などの基本的な配慮もしながら、自動ドアの安全な使用方法を検討してください。
自動ドアが原因の事故の特徴
最後に、自動ドアを安全に設置するために、自動ドアが原因で起こる事故の特徴も確認しておきましょう。
【自動ドアが原因の事故の特徴】
- 事故発生時の年齢:9歳以下が突出して多く、次いで60歳代
- 事故の主な内容:「引き込まれる、ぶつかる、挟まれる」で、9歳以下は引き込まれるケースが多い
- 事故の原因:ドアに手を置く、戸袋部(ドアが開いた際に収納される部分)に挟まれるケースが多い
- 事故の発生場所:商業施設・金融施設・集合住宅が多い
自動ドアの動作不良が原因の事故で、自動ドアの所有者が賠償責任を負うことになったケースもあります。
どのドアを設置しても安全対策が必要ですが、自動ドアを設置する場合には上記のような特徴を把握したうえで、事故が起こりづらい設置方法を検討してください。
首都圏で自動ドアの設置を検討中の方は、株式会社MAC(マック)へお問い合わせください。
建物の現状に応じて、安全で便利に活用できる自動ドア・防護柵の設置プランを提案いたします。
まとめ
自動ドアを安全に設置・使用するために、防護柵設置の際に参考にするべき日本産業規格の規定などを紹介してきました。
自動ドアの防護柵設置は義務ではありませんが、設置者は万全の安全対策をしたうえで、保全管理も実施していく必要があります。
今回紹介した情報を参考に、多くの方が安全・便利に利用できる建物づくりを検討していただけると幸いです。